曲の紹介

「落葉松」作曲:小林秀雄、作詞:野上彰

ソプラノ/アウトリーチ専門演奏家/声楽講師の永井友梨佳です♩

 

ネオクラシカルな日本のうたの曲解説シリーズ。

今回は、小林秀雄作曲・野上彰作詞の「落葉松」です。

 

 

作曲の小林秀雄さんって?

小林秀雄(1931年ー2017年)
東京都出身の作曲家。東京藝術大学卒。
「落葉松」をはじめとする歌曲・合唱曲や童謡「まっかな秋」、オペラ、器楽曲、小学校校歌など数多くの楽曲を手掛ける。66年に中田喜直らと「波の会」(後に「新・波の会」と名称変更、現日本歌曲振興波の会)を創設し、会長を務める。また、本人が直接合唱団を指導することも。愛知県立芸術大教授などを歴任。
小林秀雄 (作曲家) – TOWER RECORDS ONLINEより引用

童謡「まっかな秋」でおなじみの作曲家さん。多くの声楽作品を書かれました。

先日、「すてきな春に」という曲も解説していますのでぜひ↓
[blogcard url=”https://www.yurikanagai.com/2021/02/19/in-a-nice-spring/”]

 

作詞の野上彰さんって?

野上彰(1908年-1967年)
本名 藤本登。徳島県徳島市新内町生まれ。1967年11月4日死去(享年五八)。
1937年に文人囲碁会を企画。1946年、終戦の混乱期に芸術前衛運動「火の会」を結成。詩、小説、童話、戯曲、訳詞、放送劇の台本、囲碁、将棋、麻雀、競馬など、多彩なジャンルで奇才ぶりを発揮。「オリンピック讃歌」の訳詞や森繁久彌の「銀座の雀」の作詞ほか音楽作品も多数手掛けた。ボブ・ディランの「風に吹かれて」を最初に訳した日本人としても知られる

詩だけではなく、小説や、多くの童話の翻訳など、幅広く活躍されました。

オペレッタの演出なんかもされていたそう。多才な方です。

「落葉松」の歌詞

では、詩をみてみましょう。
※歌詞では繰り返しがありますが、省略しています。

落葉松

落葉松の 秋の雨に
わたしの 手が濡れる

落葉松の 夜の雨に
わたしの 心が濡れる

落葉松の 陽のある雨に
わたしの 思い出が濡れる

落葉松の 小鳥の雨に
わたしの 乾いた眼が濡れる

詩・野上彰

 

軽井沢の落葉松林

この詩は、野上彰さんによって1945年秋に書かれたと言われています。

終戦の年ですね。

野上さんは、作家の川端康成さんに師事しており

川端さんの別荘がある軽井沢によく通っていたそう。

そしてこの詩は、軽井沢で見た落葉松林のことを書かれたと考えられています。

 

落葉松は、秋になると美しい黄金色に紅葉する、針葉樹です。

こちらのお写真は、軽井沢にあるカフェ「キャボットコーヴ」さんのHPよりお借りしました。

立派な落葉松!とても背が高い木なんですね。

軽井沢は、落葉松の名所としても有名なようで、

あの浅間山でも、落葉松がたくさんみられるみたいです↓


【北関東・信州 浅間外輪山 黒斑山】 紅葉の綺麗な山へ出かけよう! | 好日山荘マガジン (kojitusanso.jp)より引用

黄金色に染まった紅葉が、とても美しいですよね。

 

落葉松と雨とわたし

ご紹介した写真は、どれも天気の良い風景ですが、

この詩では「雨」の様子が描かれています。

黄金色の落葉松に、秋の雨がしとしと降る様子は、想像しただけでもとても美しいですよね。

 

この詩の中では、「雨」「濡れる」という言葉が何度も繰り返され、

その湿度の高さと比例して、感情の高ぶりもとても感じられます。

 

また、よく読んでみると同じ雨ではなく、様々な情景が描かれています。

「秋の雨」「夜の雨」「陽のある雨」「小鳥の雨」

中でも、「陽のある雨」っておもしろいですよね。

たまに、太陽の光が差しているのに、雨が降っていることってありますよね。

とても幻想的な雨ですが、そんな情景のことをいっているのかな?

 

また、「わたし」も様々なものを「濡れる」と表現しています。

「手」「心」「思い出」「乾いた眼」

「思い出が濡れる」ってどういうことだろう。

「乾いた眼が濡れる」ということは、涙を流している?

じゃあ、なんで泣いているんだろう。

 

落葉松と雨をみながら、「わたし」が何を想っているのか。

落葉松と雨の美しさに、感動しながら泣いているのかもしれないし、

誰かとの別れを思い出して、悲しみから泣いているのかもしれない。

読み手次第でいくらでも想像を広げられますよね。

個人的には、悲しくて泣いているとしても

どこかに温かさや慰めがあるような、そんな気がします。

 

やさしい秋の長雨のような音楽

この詩に小林秀雄さんが書かれた曲も、本当に美しいです。

4拍子なのですが、ピアノパートでは常に3連符が刻まれていて、

うたにも3連符が多用されています。

この3連符が、しとしとと降り続く、秋の長雨のようですよね。

そしてこの3連符が、この曲のエレガントさ、優しさ、

心に寄り添ってくれるような感じも、醸し出しているような気もします。

 

出だしは穏やかな曲調なのですが、

3~4連目の、

落葉松の 陽のある雨に
わたしの 思い出が濡れる

落葉松の 小鳥の雨に
わたしの 乾いた眼が濡れる

ここの部分では、曲の強弱・音程ともに大きく変化して、

感情がかなり揺れ動いている様子が曲で表現されています。

 

特に、「落葉松の 小鳥の雨に」は、高音で歌いあげるこの曲の山場です。

ここにどんな感情を込めるのか。

嬉しさなのか、悲しさなのか、複雑な感情なのか。

何通りでも表現ができそうです。

そしてその後、また出だしと同じメロディーが繰り返されるのですが、

そこへ至る過程が、なんとも感動的なんですよね。

とても印象的で、一度聴いたら忘れられないです。

 

作曲エピソード

この曲は、実は作詞の野上さんが亡くなったあとに書かれているんです。

小林秀雄さんや中田喜直さんが創設した、日本歌曲振興のための団体「波の会」

この「波の会」の副会長が、作詞の野上彰さんだったみたいなんですね。

そして、1967年に野上さんが亡くなられたあと、

野上さんの追悼のために小林さんが作曲依頼をされて、この「落葉松」の詩に目をとめたそうです。

小林秀雄さんは、この詩が軽井沢の情景を描いていることを知り、

「私にとっても上州は父方の祖先墳墓の地であり、少年時代から父に連れられて通った落葉松林の四季折々の風情が、この詩を前にして鮮やかに浮かび上がり激しい感動を覚え、独唱とピアノのための初稿を一気に書き上げた。」
落葉松 (小林秀雄) – Wikipediaより引用

とお話されています。

偶然にも、小林さんも上州の落葉松の情景に思い入れがあったんですね。

そしてこの曲は多くに人に歌われるようになり、

小林さん自身の手で、女声合唱・混声合唱・男声合唱・ピアノ曲としても編曲されます。

まさに小林秀雄さんの代表曲となったんです。

 

しかし、これだけの名曲。

作詞の野上さんも、ぜひ一度聴いてみたかっただろうなあと思います。

 

おわりに

今回この記事を書くにあたって、

落葉松がこんな木だったんだ!というのを初めて知りました。

紅葉が本当に美しくて、軽井沢に行ってみたくなりましたね。

この曲を知っていると、雨の日も嬉しく紅葉をみられるかもしれません(*^^)

これからも大切に歌いたい1曲です。

 

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永井友梨佳
声楽講師/ボイストレーナー。ソプラノ歌手。
鳥取県米子市出身。京都市立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業。

ストアカ プラチナバッジ獲得講師。レッスン受講者からの評価は、平均☆4.97をいただいています(レビュー件数200件以上)
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POSTED COMMENT

  1. ユウタロウ より:

    『落葉松』素敵な曲ですよね。
    ところで、『落葉松の 秋の雨』この解釈をほぼ全ての方が誤って理解されていると思います。
    指導者の人も多分単純な字面で理解したつもりになっていると思います。ネットを見ても皆さん同様です。

    秋の後半、軽井沢の落葉松林に行ったことのある人ならばその意味がわかります。

    例えば『ひのある雨とは、俗に狐の嫁入り』とまことしやかにネット上で説明する人まで。狐の嫁入りの雨は、雨の中にも明るい陽が射しています。その時の心境は?雨では濡れますが、心は?
    また、小鳥は雨の中鳴きません。雨があがる頃鳴き始めます。

    雨にうたれて、心が・想いが濡れるという安直な発想なのです。

    落葉松林に秋の後半散歩してみてください。
    落葉する落葉松の葉をご存じですが?繊細な葉が〈それは一斉にハラハラ落葉する〉その様の感動、それは素晴らしいものです。

    秋のちょっとさみしげな軽井沢、落葉松林を一人歩く感慨なのです。落葉松の雨とはそういう意味なのです。

    そう思って一度読んでみてください。雨で濡れるより歌詞がより一層深くなります。

    • yn-nagai より:

      ユウタロウ様

      コメントありがとうございます!
      そして、素敵な解釈もご教示いただきありがとうございます。
      軽井沢の落葉松林には行ったことがないのですが、ユウタロウさんのコメントを読んで情景が浮かんできて、
      この詩がより味わい深くなったような気がします。ありがとうございます(*^^)
      落葉松林が落葉する光景、いつか実際味わってみたいです!

      永井友梨佳

  2. せきりょう より:

    ユウタロウ様
     60年少し前、僕がまだ19歳の頃にたまたま立ち寄った上高地で、唐松の落葉に出会いました。晩秋のみぞれが降る中の落葉でした。まるで細雪が降るように絶え間なく落葉する唐松は静寂と寂寥の極みを演出しているようで、一瞬感動で動けなりました。
     もう一度あの感動をしてみたいと思っておりますが、未だ実現しておりません。
     また北原白秋の歌の他を探してみましたところ、野上彰のこの歌に出会いました。我々が受けた感動を彼が経験したかどうかは分かりませんが、…
     しかし、僕たちが同じ感動を持っていること、嬉しい思いでいっぱいです。他に私どもの体験感動が表現されている歌とかエッセイとかありましたら教えてください。

    • yn-nagai より:

      せきりょう様
      コメントありがとうございます!
      承認がとても遅くなってしまい、本当に申し訳ありません
      落葉松の降る光景を体験されたのですね…!
      ユウタロウ様と同じ感動をされたこと、こうやってコメント欄でめぐり会えたこと、すごく素敵なご縁ですね(^^)
      私も雨の中落葉松の降る景色を、一度体感してみたいです。
      素敵な共有をありがとうございます!

      永井友梨佳

  3. 千秋 より:

    はじめまして。
    落葉松がたくさん生えている稚内の山の中に住んでいるものです。
    ある秋の日、「雨が降っているなぁ」とおもったら、水滴ではなく落葉松の黄金色の葉が雨のように降り注いでいました。落葉松の葉は、雨のように散ります。

    落葉松の陽のある雨は、水滴ではなく、雨のように降る落ち葉ではないかと私は思っています。
    野上彰さんは、何かに「落葉松は焼夷弾だ」と書いているらしく、陽のある雨に思い出が濡れるとは、葉の落ちる様を見て空襲を連想し、その時亡くなった人たちやその人たちとの思い出が胸によみがえるという感じではないかと想像しています。できれば思い出したくない胸に封印していた辛い思い出が乾物を水戻しするかのように思い出されるというのを、思い出が濡れると表現したのではないか?とか。

    小鳥の雨も、早朝うるさいくらいに聞こえてくる鳥のさえずり、鳥の声がシャワーのように降り注ぐ様を表しているのではないかと。私の住んでいるところはそんなかんじです。
    野上彰さんの詩に小林秀雄さんが曲をつけた作品に『前奏曲』という作品があるのですが、その中に雨の曲があって、雨が「生命や希望を育む水」としてかかれています。小鳥の雨に乾いた目が濡れるとは、いきいきとした小鳥のさえずりを聞き、戦争で傷み干からびてしまった心が、希望を育む気力を取り戻す、そんな感じの様を表しているような気がします。
    軽井沢の豊かな自然が癒やしや生きる力を与えてくれる、そんな歌ではないかと想像しています。(考えすぎでしょうか 笑)

    • yn-nagai より:

      千秋様
      はじめまして!コメントありがとうございます。
      落葉松の葉は、雨と見間違うように降るのですね…!
      野上彰さんの「落葉松は焼夷弾だ」という言葉も、とても衝撃的ですね。このようなお言葉を残しておられるとは知りませんでした。
      考えすぎということはないと思います!
      詩や曲の解釈は、正解はなくて、ひとそれぞれ自由な発想で解釈することこそ面白いと思います(^^)
      とても素敵な解釈を教えていただき、ありがとうございます!

      永井友梨佳

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